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こんばんは。あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いいたします。 昨年末に、「jazzamurai、2008年の10大事件!!」をお送りしようかとも思ったのですが、家を掃除したり酒を飲んだりしているうちに、年が明けてしまいまして、企画はうやむやになってしまいました。しかし何とも記憶力が無く、一体何が事件だったかも忘却の彼方にあり、10も思い出せない、という可能性もあり・・・・。 まあ、昨年の最後の四半期における、拙者の大事件といえば、『モンテ・クリスト伯』でしょうねえ。何せ、前田真宏監督のアニメ「岩窟王」の集中鑑賞に始まり、ケヴィン・レイノルズ監督、ジェームズ・カヴィーゼル主演の映画「モンテ・クリスト伯」の鑑賞、そして原作本の山内訳を一気読みした上で、再度年末にアニメ「岩窟王」を再鑑賞するという、コンプリートDVD-BOXを買ってしまいかねない勢いですから(出来れば、今んとこそれは避けたい・・・・)。 物語の概要については、wikipedia等をご参照下さい。 簡単にご紹介すると、「原作「モンテ・クリスト伯」は、「三銃士」「王妃マルゴ」などでその名を知られるフランスの文豪:A・デュマの代表作。1844年、新聞連載から始まった本作は、ナポレオン時代のフランスを舞台に、若き航海士:エドモン・ダンテスが仲間の裏切りにあい、大富豪:モンテ・クリスト伯爵となって壮絶な復讐を行うという大河ロマン小説として発表され、以降フランス国民文学の頂点に立つ名作となった」ということになります。 正直、こんなに夢中になって小説を読み耽ったのは久しぶりですね。めちゃめちゃ面白かったです。粗筋は理解していましたが、結末は原作、アニメ、最新ハリウッド映画の三者とも、全く異なっています。拙者、原作から入らなかったせいか、パラレル・ワールドを全て許してしまえます。つまり、どの結末も結構好きですね。何故なら、原作の設定がしっかりしており、また登場人物が個性的なので、芯を貫いている復讐と慈愛の葛藤さえ描けているならば、幾ら結末が異なった物語が作られようが、全てはデュマの描いた世界が、また外に広げられることになると思うからです。こんなことが許容されうるのは、この物語をおいて他にないのでは。 2800ページに及ぶ大作の中には、派手な大立ち回りはありません。じわじわと宿敵を追いつめる伯爵に派手さはありませんが、それでも古典から近代にわたる幅広い文学の知識とキリスト教精神に裏打ちされたこの物語の、スピード感と凝縮感に、拙者は熱中しました。 『1巻』では、徐々に明らかになるファリア神父の聡明な語りに感動。素晴らしさにスパダの財宝を巡る謎解きと、最終ページのファリア司祭の台詞、「あなたはわしの息子なのだ!」に激しく感動しました。圧倒的絶望の中に閉じこめられた二人の男の魂の出会い。親愛の情が迸るように溢れ出た瞬間に涙が出ました。 『2巻』では、分かっていても脱獄のトリックと緊張感に感心し、ファラオン号の復活に感動して、拳を突き上げました。 『3巻』では、ローマの謝肉祭の描写にウットリし、音も立てず約束の時間ぴったりに現れた伯爵の登場シーンに虚をつかれ(ここのシーンはアニメが上手く表現していた)、初めは高飛車な対応をしていた金の亡者ダングラールが伯爵に飲み込まれていく姿に笑い、いきなり伯爵の言葉の真剣を斬りつけられた検事総長ヴィルフォールの否定のための否定のような毒舌に辟易しました。 『4巻』では、原作のエデはアニメのエデよりずっと美人だと思ったり、ヴァランティーヌとマクシミリアンの歯の浮くような長い会話にうんざりしたり、テレグラフ=「腕木通信」を用いた「文学史上最初のネットワーク犯罪」のシーンに感心したり。問題のオートイユの別宅でのちょっとサスペンスがかった展開では、追い込まれていくエルミールを逆に可哀想に思ったり。 『5巻』では、ダングラールが株に失敗して追いつめられていきます。舞踏会での伯爵とメルセデスの無言の再会と、メルセデスに誘われて踊るため彼女の腕をとるシーンの抑制された表現に感動しました。そして、エデの語る過去の悲惨な物語と怒りに同情し、思わぬ所から2つの魔の手に襲われようとしているヴィルフォールには、敵役ながら可哀想に、と思ったりしました。 『6巻』では、伯爵とアルベールの最後の旅の儚さが描かれ、そして、その父モルセールの裏切りに満ちた過去が暴かれます。怒ったアルベールが伯爵に求める決闘と、メルセデスにせがまれて苦悩する伯爵の感情の揺れ動きの表現に感動。そして、モルセールは最初に地獄に堕ちます。 最終、『7巻』では、死んでしまったヴァランティーヌと、軍人のくせに女々しいマクシミリアンに困ったり、破産しかけのダングラールから500万フランをひったくる伯爵の冷酷さに恐れ入ったり。暗い情熱のみが成し遂げられる致命的な方法によって、ヴィルフォールが陰惨な過去を暴かれ、同時に大事なものを奪われるさまに恐怖しました。 そして、ここにおいて、伯爵は重大な失敗を犯します。復讐に全く関係の無い人間を死に至らしめてしまい、「復讐の権利をはるかに踏み越えてしまった」ことにより、「神われにくみしたまい、神われとともにいます」と言うことができなくなってしまったのです。この部分が重要です。伯爵はメルセデスに言います。「いっさんに宙を飛んで、目指す目的へと達したのです。たまたまそうした道の上で、わたしと出会ったものこそは、まさに災難だったと申せましょう」と。この反省を拭くんだ台詞が単なる勧善懲悪の物語と異なるこの物語の含蓄であり、同時にひょっとすると強者の理屈を生み出しかねない、キリスト教的精神の解釈を巡る、とても危うい部分なのだと思います。 そして、剣先の鈍った伯爵は、最後に残った相手、ダングラールに復讐を成すために、観光名所となったイフ城に赴き、かつての復讐心を研ぎ光らせ、それを成し遂げます。 そしてラストに至る訳ですが、このラストはちょっと拙者にとっては、「え゛」って感じでした。なんか素っ頓狂というか・・・・。だから、複数のエンディングがあって良いじゃないか、とも考える訳ですが、兎に角、本書最大の問題発言である、「かわいいやつめ!」以下略には膝かっくんでした。 まあ、その様な波瀾万丈の物語ですが、大ざっぱな粗筋だけでもお腹一杯になるのに、細部の書き込みが凄いから、再読にも耐えますし、まあ、ホンマに凄い面白いので、また読んでみて下さい。長いのを読む自信が無い方には、プロレスエッセイでお馴染みの村松友視氏がまとめた「世界の冒険文学〈15〉」講談社がお奨めです。エッセンスがぎゅっとつまって、これも面白かった・・・・。 それでは、お約束通り、伯爵の名台詞でしめましょう。 「待て、しかして希望せよ」(←中田譲治さんの声で四六四九。) モンテ・クリスト伯〈1〉 (岩波文庫)
by jazzamurai
| 2009-01-06 01:17
| 丸腰日記
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